やわらか

彼女の人生は間違いじゃないのやわらかのレビュー・感想・評価

4.1
武蔵野館に『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン』を観に行ったらサービスデーで満席。がっかりして帰りかけたら、ちょうどこの作品の最終回のCMが始まったところだった。こちらは空席がいっぱいだったのでさっそくチケットを買って入ってみた。
 
ほとんど予備知識なく観はじめたけど、10分ぐらいで大枠は理解できた。震災後すべてが変わってしまったいわき市を舞台に、平日は公務員として、週末は東京でデルヘルとして働く女性が主人公。彼女だけでなく、父親、同僚、元恋人、その他大勢の人が、起こってしまった出来事の自分の中での受け止め方を問い続けるという、群像劇としての側面もある。
 
単なる1要素ではなく震災を真正面から取り上げてる映画なので、はっきり言って客観的は評価がしにくい。自分が東京に居住していることもあるけど、仮に現地に居たとしても結局はひとりひとりが違った体験と受け止め方をしている筈なので。監督で原作小説も書いている廣木さんは福島県の出身だそうだけど、だからといってこの作品が不特定多数の何かを代表するわけでもないと思う。
 
それを承知の上で感じたことを言えば、自分としてはとても素直に観れた。どんなに取り返しのつかないことが起きても(起きなくても)、人が生きる限り日常は続き、時間の経過とともに各々変わって行く、変わらざるを得ないという形での「現在」の描写。
 
主演の瀧内公美さんは抑えた表情と声が良かった。大胆に身体を晒すシーンがあるけどスレンダーでとても綺麗。個人的にお気に入りの作品、「恋人たち」の出演者が、光石研さん、安藤玉恵さん、篠原篤さんと、3人も出てるのも嬉しかったな。
 
あと、人々の紡ぐドラマの背景として、現在進行形で起こっている農業や漁業の問題、除染の作業や避難区域の様子などが、ある時は空撮で美しく、ある時は重く映される。シーンは少ないけど効果的に挿入される音楽と併せて、この映画の大きな魅力だと思う。
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