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さよならの朝に約束の花をかざろうのmanamiのレビュー・感想・評価

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『あの花』では「幼なじみ」、『ここさけ』では「声」の喪失を描いた岡田麿里が、初監督となる今作(これはどう略すんだろ、『さよ約』?)で見せてくれるのは、「老い」の欠落。
イオルフの民は皆、外見は若いままで何百年も生きながらえる。アンチエイジングやら若見えやらがもてはやされる世にあって、中高生ほどの見た目を維持してられるなんて、夢のよう?
でもそれが数百年続くということは、「老い」を手に入れられないということは、同族以外の人々とは時を共有できないってこと。
「おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒にいようね」なんて将来を夢見ることはできない。もちろん「わたしがオバさんになっても本当に変わらない?」なんて甘えてみることも叶わない!
「老い」がないことはつまり、未来がない今しかないことと同義なのかも。
そんな運命を生きるマキアが母となったことにより、弱虫で泣き虫だった自分を変えていく過程が微笑ましくもあり、いつか来る「さよなら」を想像して切なくもある。
「さよなら」は言語によっては、見送る側と見送られる側で違う言葉になる。今作のタイトルの「さよなら」はどちらだろうか。
勿体ないなと思ったのは、イオルフと人間の間に生まれたというバロウの使い方。時々いいとこに出てきてエエ声(♡)を聞かせてくれるだけでなく、両方の属性に悩まされる様を、マキアの人生に交差させたら深みが出たんじゃないかな。
そして素敵だなと思ったのは、ヒビオル。美しい布に言葉を織り込めるなんて、羨ましいくらい。それに横糸を通していくあの動作が単純に美しくて、いろんな童話に出てくる機織り機に憧れて「おりひめ」を買ってもらった少女時代を思い出す。

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以下、追記。

映画ファンイベントのために再鑑賞。
守るべき存在ができたことでたくましくなっていくマキア。彼女に守られながら成長していくエリアルだけど、それは反抗期ひいては親離れへの道でもある。
なるべく離れて過ごそうとする、一緒にいるとそれだけでむしゃくしゃする。あんなに可愛らしく「母さん」と呼んでいたよに、「ちょっと」で済ませるようになる。ああ、切ない。無常。
親子愛、家族愛、そして友人や人間としての愛情、さらに人との出会いもとても印象的で、アニメという枠を超えた名作だなと、改めて感じる。

2024-49
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