りょう

狼/男たちの挽歌・最終章のりょうのレビュー・感想・評価

狼/男たちの挽歌・最終章(1989年製作の映画)
5.0
 最近だと“タイトル詐欺”と言われそうですが、たとえダマされても絶対に観るべき傑作です。「ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌」と一緒で、1986年の「男たちの挽歌」とは関係のない物語ですが、この3作品がジョン・ウー監督の名匠たる所以です。
 「男たちの挽歌」と比較すると、銃撃シーンがたくさんありますが、その規模感がさらにすさまじいです。さすがに四方八方からの襲撃でカット割りが多用されていますが、刺客たちのやられっぷりも含めて怒涛の展開です。教会やモーターボートは、1997年の「フェイス/オフ」の元ネタかもしれません。
 物語は、依頼人である組織に狙われる暗殺者というありがちな、ほとんどプロットがないシンプルなものです。ただ、敵対するはずの暗殺者のジェフと刑事のリーの友情関係がいつのまにか物語を支配して、リーがジェフに同化して共犯関係になっていく印象が強烈です。ジェフとジェニーの恋愛物語が霞んでしまうほどに…。
 この作品をジョン・ウー監督の最高傑作とするファンも少なくありません。彼の作品のなかでも徹底的にダークな脚本と演出です。極めつけのバッドエンドを最初に観ときは、少しトラウマになりそうでした。当時の香港映画には多少なりともコメディっぽいシーンがありますが、この作品にはそれもありません。ジェニーの部屋でジェフとリーが鉢合わせになり、ほとんど初対面なのに旧友のふりをする場面で少し和みますが、ここも緊張感が維持されてた高度な演出です。
 この当時の香港の空気感や唯一無二のチョウ・ユンファの風格など、どうにも再現できない映像で構成された不朽の名作です。
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