華麗なる加齢臭

鋼鉄の雨の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

鋼鉄の雨(2017年製作の映画)
4.9
【文在寅支持者の心情がわかる傑作映画】
 この作品は、北朝鮮で勃発したクーデター、そしてそれを契機として現在休戦中である朝鮮戦争が再度戦火を交えることを命をかけて防ごうした者達を描いたものである。

 2時間20分という長尺であるが、分断国家である韓国と北朝鮮の「統一」はもとより、米韓同盟、日米同盟、韓中間関係、そして中朝関係等の韓国を取り巻く国際情勢や、核保有国と冷戦中である韓国の「核武装」について、ヤン・ウソク監督のメッセージが伝わってくる。しかもそれを、飽きさせることのないエンターテインメント作品として仕上げているのはさすがだ。
 政治や民主化等をテーマとしながらもエンタメ作品とするの韓国映画の真骨頂であるが、その中でも傑作と呼ぶに値いするほど、考えさせられる様々な要素が盛り込まれている。

 ヤン・ウソク監督は、親米保守の朴槿恵政権下において「弁護人」(2013年)を作った監督だ。「弁護人」は親北・民主派の盧武鉉元大統領を描いた作品であり、その盧武鉉元大統領の流れを受け継ぐ文在寅大統領にシンパシーがあるのは想像に難くない。
 つまり、この作品で描かれている、北朝鮮、米国、日本、そして金正恩への了見は、現文在寅を支持する親北左派と呼ばれる韓国人の考えと思っても、そんなに読み違えることはないだろう。

 私は、ネトウヨ嫌韓諸氏を軽蔑しているが、同時に文在寅の「親日清算」「積弊清算」も腹が立ってしょうがない。しかし、この作品を観れば、「なるほど文在寅政権支持者はこんなことを考えているのか」ということは理解出来る。

 それにしても、感染系の「FLU 運命の36時間」もそうであったが、現政権支持者は、私たちが考えている以上に「反米」であり、複雑な気持ちになってしまう。