Inagaquilala

ガンジスに還るのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ガンジスに還る(2016年製作の映画)
4.0
人間の「死」について描かれた作品なのだが、端々に感じられるユーモアと妙に迸る人間臭さで、観た後に静かに心を動かされる作品。インド映画だが、これ見よがしの「踊り」のシーンは出てこない。とはいえ、主人公たちが赴く、インドの聖地バラナシ(ベナレス)の祝祭の様子は、しっかりと作品中に収められており、それが物語のターニングポイントともなっている。またガンジスの悠久の流れも、うまく作品中に取り入れられている。

死を覚悟した父親、聖地バラナシでそのときを迎えたいという父ダヤに従い、付き添いで出かける息子のラジーブ。しかし、ラジーブには仕事があり、バラナシでも携帯電話でやりとりをしている。安らかに死にたいと考える人が集まる「解脱の家」に宿泊することになる父と息子だが、どこかで心はすれ違っていた。聖地バラナシの習俗が、劇中に配され、そこここに「死」のイメージが漂うのだが、作品はそれほど暗くはない。むしろ、希望さえ感じさせる。監督は弱冠27歳のインドの新鋭、シュバシシュ・ブティアニ。心憎い作劇は、熟達の監督のようにも感じさせる。
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