あさのひかり

シネマ歌舞伎 沓手鳥孤城落月のあさのひかりのレビュー・感想・評価

4.5
まず、最初の豪華な(いやあのお茶碗、本来なら美術館で大事に飾られてるものじゃないの?)解説が、豪華なだけじゃなくて的を得てて、歌舞伎初心者にもとても分かりやすい。私の感想なんかよりこの解説で十分だけど。

大阪夏の陣で散りゆく淀の方と、秀頼を始めとしたその周りの人達の間で、あったかも知れない悲劇のドラマを描く。淀の方って大河ドラマとかで見ても、すごく難しそうな役だと思ってたけど、玉三郎さんの役が、今まで観た中で一番、淀の方の数奇な人生故に抱えた様々なものを一番しっかり表現してたと思う。平凡な人生ではあり得なかった苦しみ悲しみ怒り憎しみ、そんな胸の内に抱えたものが、落城という極限状態であのように成らざるを得なかった淀の方。そんな彼女の心に渦巻くものを思うにつけ、涙が止まらなかった。

そして、圧倒的不利な状況で武家の棟梁として大きな決断をしなきゃならない秀頼...もともと孤独だろうに母の行動で更に孤独を突きつけられるという辛さ...そんな彼から滲み出る思いにも涙が止まらなかったし、最後の決断はどうみても、そんな母への愛...これにも涙が止まらなかった。

そんな状況で仕えなきゃな家臣や侍女たちの苦しみや、それでも主君を何とかしてあげたい思いなんかも描かれていて。ドラマとして悲劇として素晴らしかった、観て良かった。
あさのひかり

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