カタパルトスープレックス

TOURISMのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

TOURISM(2018年製作の映画)
2.9
宮崎大祐監督作品マラソンで一番期待していたのが第三作目となる本作。いまいち乗り切れなくても一作目、二作目と見続けたのは本作のため!期待を胸に抱いてみたのですが、どうだったでしょうか?

結論から先に言ってしまえば期待外れでした。日本を舞台とした前半はすっごく良かったです。しかし、舞台をシンガポールに移してから迷走がはじまたっと思います。何を伝えたいのか、テーマが全く分からなくなってしまいます。良くも悪くもシンガポールのお国紹介作品になってしまっています。ボクは9年シンガポールに住んでいたので、そう思ってしまうのかもしれませんが。

最初は定番の観光地(マーライオン👉マリーナ・ベイ・サンズ👉オーチャード👉中華街)からニーナ(遠藤新菜)が迷子になってちょっとディープなシンガポール。ラヴェンダーあたりからリトルインディアまで行ったのかな?シンガポールは主に四つの人種(中華系、南インド系、マレー系、ヨーロッパ系)から構成されていて、本作ではその文化をそれぞれバランスよく紹介する作りになっています。古い文化から新しい文化まで。ボクにとっては全く新鮮味はなかったですが、シンガポール紹介映画としては悪くないのではないでしょうか。

さて、問題はここから。途中で出てくる塔も四つの人種を表しています。日本占領時期死難人民記念碑です。日本人はあまりよく知らないですが、シンガポールでは多くの人が日本兵によって殺されました。その慰安碑です。シンガポールでは小学校の歴史の授業でも教えていますが、日本では教えていませんよね。で、それをなぜこの映画に使うのか。その意図がよく分からない。前作『大和(カリフォルニア)』(2016年)でもそうでしたが、重めのテーマを軽く入れてくるのが宮崎大祐監督です。

ボクはあまり好きじゃないんですよね、重いテーマに軽々しく触れるのって。軽く触れるくらいだったら、真っ正面からその重いテーマにぶつかっていって欲しい。もっと意志を持って伝えて欲しい。住民に気がつかれないように日本軍は自転車でマレーシア側からシンガポールに侵入して(銀輪部隊)自転車から銃で多くの打ち殺したこととか伝えて欲しい。本作での日本占領時期死難人民記念碑の扱いはすごく薄っぺらく感じました。軽く触れたからって、それを免罪符にするなんてカッコ悪い。

とはいえ、前半の日本パートはすごく良かったので前作『大和(カリフォルニア)』よりは良い点数。