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ボス・ベイビー ファミリー・ミッションのLCのレビュー・感想・評価

3.4
面白かった。

無印の方で、成長しない仔犬に感じた怖さみたいなものを、割と強く出してきた印象がある。
無印を思い出させるちょっとした景色もあり、嬉しくなる。

あの時ちゃんと「 FAMILY 」の緑ランプを通って戻ってきたから、彼は多数の人と同じように、赤子の頃の記憶を持っていなかった。でも、赤子の頃の彼と交流した記憶の消去を拒んだ主人公は、ちゃんと覚えている。
これにより、主人公の「想像力が豊か」という特徴が、良くも悪くも活きる状況になっていて面白い。
そして、そんな主人公の話を聞く弟の表情や仕草は、成長しても記憶の中のそれらとピタリと一致する。思わずクスッとしてしまう。
会社に飛んで行く時、ちゃんとポーズを思い出したり、そういう景色がひとつひとつ楽しい。

無印では両親の愛を全身で受け取っていた主人公が、今作では親目線で子のことを考えており、興味深い描写がたくさんあった。
子のことを考えて全力で楽しませようとするんだけれど、自分の時とは違うから戸惑うし、自信をなくす。
自分が我が子くらいの時はもっと楽しいことに夢中だったけど、目の前の娘は落ち着いていて、きちんと学校の課題をこなすことを選択する。自分は寝る前の両親との時間が好きだったけど、我が子は違う過ごし方を好む。
人の親になる為の専門学校に行くわけでも、資格を取るわけでもなく、親も手探りで親をやる。自分が子どもの頃のことを覚えていても、子は自分とは違う人間だから、同じ対応では効かないことがたくさんある。だから自信が持てず、不安になったりする。なんなら親である自分より叔父である弟の方が子に好かれてそう、と落ち込む。その姿が等身大に見えた。
特に裁判の場面。
良い親か、悪い親か、判断される恐怖って実際あると思う。この育て方で合っているのか、親として勉強しなければならないことを知らずに間違いを犯していないか。
何より、自分なりに親をやる姿が、子にとって悪い影響を持つと責め立てられる痛みは、想像するよりずっと大きいだろう。
それはきっと、本作の悪役さんのご両親も同じ。

このシリーズは、ちゃんと描写対象を絞るからこそ、見やすい。
今作では例えば、子に対して真剣に向き合わない親は出てこない。子に愛を注ぐ親に限定した話にするからこそ、ややこしくならず、また、だからこそ主人公の、親としての良し悪しを判断される恐怖を、見ていて受け入れやすくしている。
そして、そうやって不安になるのは、弟へ抱いてきた劣等感とも繋がる。自分は優れていないと知っているからこそ不安になる。

本作の怖かった部分は、無印と通じるものがある。
ずっと仔犬のまま、という存在が出てきたけれど、それはつまり「成長の拒否」である。成長のひとつの特徴は、自分の考えを持つことだ。
成長しない仔犬とは、自分の考えを持つことを拒否された存在、つまり「支配のしやすさ」を顧客に対して商品価値にしていると受け取ることができるわけで、犬とはいえなあ… と思っていたら、今作では明確に人の思考を奪い、支配している。マジかよ。
不気味な子がいたり、物言わぬ忍者軍団が襲ってきたり、ゾンビ描写あったりするけれど、1番怖いのはやっぱりそういう「成長の拒否」が持つ需要を明確にわかって描写しているところ。
親だって成長するんだわ… 成長レベルにおいて完成する人間なんておらん… 成長速度に関しては個人差かなり大きいけどもさ…
仔犬さんは、成犬にならないことを期待されて買われる。大人はもう変わらないと諦められて、自我を奪われる。どちらも成長を否定、拒否されてしまっている。
いや本当、改めて怖い。

とりあえず、メントス食べて落ち着こうか。数えるくらいしか食べたことないけれど、美味しいよね。味が何種類かあるんだっけ、どうだったかな。
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