ぽん

15年後のラブソングのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

15年後のラブソング(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ニック・ホーンビィ原作・脚本の映画にハズレなし!
アヴァンタイトル(タイトルが出る前のシークエンス)からもう、ホーンビィ節全開。ダンカン(クリス・オダウド)という男の一人語りを聞いていると、「ハイ・フィデリティ」(2000)のジョン・キューザックの姿が浮かんでくる。ああいう“お子ちゃま男”の描き方がホントに上手い。ウザ可愛いというか。ジョン・キューザックより本作のダンカンの方がウザ度多めですがw

でも、物語の主人公はこの男じゃなくて、彼のパートナーのアニー。演じるローズ・バーンがとっても素敵なのです。キレイだけど美人すぎない、知的だけどスマートすぎない、温かい人柄だけどホットすぎない。突出した魅力には欠けるかなーという彼女の、この適度なところが私は好き!

伝説のロッカー、タッカー・クロウ(イーサン・ホーク)に心酔するダンカンに振り回され、愛が冷めてきたことに気付きながら安定を手放せず同棲を続けているアニー。ひょんなことからアメリカに住むタッカー・クロウとメールのやり取りが始まる。これまでの人生のことや悩みや率直な思いを打ち明け合うようになり、会ったこともない相手なのに、何故か心を開いて話し合える2人。

そして、とうとうタッカーがイギリスにやって来る。到着早々ハプニングで入院するハメになるタッカーに、アニーが差し入れた本が『チャリング・クロス街84番地』なのがミソ。この小説は、アメリカ在住の女性とイギリスの書店員が手紙のやり取りだけで心を通わせ合うというオハナシ。まるでアニーとタッカーのよう!

病院のベッドで臥せるタッカーの周りに、元妻たちと、その子どもたちがワラワラ大集合するシークエンスも楽しい。演じるイーサン・ホークは、これ以上ないというくらいのハマリ役。ヘタレ男ナンバーワンですね。

アニーはタッカーに惹かれながらも、なかなか大胆にはなれない。ムズキュンな2人にニヤニヤ笑いが止まりません。で、勇気を出してタッカーを誘うシーンが可笑しいのだ。いや、彼女は品良く上手に話すからイイのだけど、それを聞いたときのイーサン・ホークの顔!「え、今すぐ?」なんて、喜びが心の底から爆発してるのを必死に抑えてるみたいな表情に思わず爆笑。

さて、アニー、ダンカン、タッカーの3人はどうなっちゃうのか。イイ年した大人たちの可笑しくも微笑ましい恋模様に目が離せなかった。

全編に流れているタッカー・クロウ・バンドの楽曲もとても良いです。もちろんイーサン・ホークが歌っている。そして、ラストはプリテンダーズ「ブラス・イン・ポケット」。懐かしの名曲に震えた自分ですが、後で歌詞を調べたらば、ここに秘密が隠されていることに気付いたのです。映画の結末に関わることなので、これについては後述しますが、未見の方はスルーしてください。^^


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はい、種明かしします。

「ブラス・イン・ポケット」はあなたに私のことを知ってもらいたい・・・と歌っているのです。
で、結局、アニーとタッカーはくっつく。そしてタッカーは新しいアルバムを発表。そのアルバムの1曲目が

「僕はアニーを知っている」

うっひゃあ~オッシャレー!他にも「ミスター家族計画」とか「砂の城」など、みんな2人の思い出から出来た曲なんだなーというのが分かる仕掛けになっている。タッカー・クロウは私生活を創作に昇華させる太宰治系?サイコーかよ。
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