takanoひねもすのたり

聖なる飼育のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

聖なる飼育(2017年製作の映画)
2.9
ほんのりチリのフェミニズム風味が混在する、カルト集団で育った少女の成長譚というか気づきの物語というか。

12歳のタマラ(サラ・カバイエロ)は、自然崇拝のカルト集団で育った少女。
リーダーのミゲル(マルセル・アロンソ)から寵愛を受け幸福を感じている。
ミゲルは彼女が成長し初潮を迎える日が近いことを察し『試験』だといい彼女を学校へ通わせる。
そして言う『足の間から血の印が流れ出たら私に教えなさい』と。
それは彼女との間に『純潔の子供をつくる』意味でもあった……という感じ。

ほんのりフェミニズム風味というのは、これモチーフになった話があり『祖父から子供を産むことを余儀なくされた少女がおり、彼女が産むその子供は救世主となる』というこれまたカルトの話。
監督は『彼女の意思は、彼女の望みは、そして仕えることを当然と思う周囲の人間は』という疑問を持ち、この作品を考えたそう。
なので、タマラのモノローグが結構差し込まれます、その内容の移り変わりで彼女の心の変遷が辿れるようになっています。

ただ、何ていうか、浮世離れした……ファンタジー的な演出なので、監督の物語の意図は、ぼんやりとフィルターがかかったような感じ。

ラスト間際の睡姦+輪姦→男性主導における女性への支配構造を表しているのもあって、マイルドに描写しているものの、いやーーーな気持ち。

チリの法律で中絶の許可が出たのは近年です、ましてやタマラは未成年。
両親の許可が無いと中絶は難しく、妊娠したらおそらく産むしか選択肢は無いでしょう。

EDにながれる翅が揃っていない蝶は、そういった因習や不自由な社会制度に縛られた女性達なのかも知れないのかも。

作品としては、フェミニズムやカルトの軸で観るのであれば何かしら感じるところがあるのかも。タイトルやあらすじでふらっとチョイスして観ると……眠くなる可能性が……。