藻尾井逞育

地獄の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

地獄(1960年製作の映画)
4.0
「朝に紅顔の美少年も一度無常の風に誘われると夕べに白骨となる。人間はいつかは死なねばならぬ。死に至るまでは罪を犯した人間も無数である」
「あなたは悪魔だ。あなたは呪われた死神だわ。私たちに触らないで」

前途洋々だが人一倍罪の意識の強い清水は、悪魔のような友人のために恋人らを過失死させてしまう。故郷へ帰った清水は死んだ恋人とそっくりの女に会うが、過失死させた相手の親に毒を盛られるなどして、登場人物全員が地獄に堕ちる……。

地獄に堕ちるまでの"現世篇"と文字通り地獄そのものの"地獄篇"の二部構成です。特に"現世篇"は、まさに生き地獄で、最後までに登場人物たち全員が死亡して誰もいなくなってしまうのは本当に圧巻壮絶です。主人公の清水も罪の意識が強すぎて、必ずしも自分の責任とは言えないものまで、悪魔のような田村たちにちょっとつつかれただけで、「俺が悪かった、赦してくれ」って人生を転げ堕ちていく様は、まるで演じている天知茂が前作「東海道四谷怪談」の民谷伊右衛門の役を引きずっているんじゃないかと思うほどです⁈
後半の"地獄篇"は少々チープな演出はあるものの、八大地獄を映像化するという、スタッフ、キャストのノリノリな雰囲気が伝わってきます。まさに阿鼻叫喚の続く中、主人公のフィアンセや妹、さらにはまだ生まれてもいない赤ちゃんまでが苦しめられているのは、ちょっと違うんじゃないって思ってしまいます。最後、明るい光の中、フィアンセと妹が傘をクルクルしているのを見上げるシーンで、主人公の魂は救われたのかな?この映画での三ツ矢歌子さん、本当に眩しかったです。