まず作品全体の作風として、サムライミ監督のホラー演出がよくここまで出せたな(許してくれた)という印象です。流石巨匠というところで、全体の安定した起承転結の場面展開はお見事です。
そして、MCUの流れとしてワンダビジョンから地続きの今作はスパイダーマンNWHからのストレンジと合流。ついにマルチバースが開かれていくと言う、フェーズ4の入口が見えてきたなと思えます。
作品として、昨今のMCUはヒーローにたいしてパーソナルなところが繊細に描かれてきている印象です。所謂ヒーローモノは勧善懲悪が基本的でしたが、フェーズ4は特にヒーローが脆い。アイデンティティをとにかく悩む。ヒーローは強くて地位を確立した存在が標準モデルだったのが、今作のストレンジはそれを幸せと感じていいのか、とても普遍的なテーマに沿っており、スーパーパワーを持たない一介の人間のそれと同じです。私たちにも共通する悩みに人間らしく、ヒーロー的な答えでアンサーする今作は、スパイダーマンを作り上げたサムライミ監督の技がみえる一作でした。
