こまち

ロード・オブ・カオスのこまちのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・カオス(2018年製作の映画)
4.0
ブラックメタルバンド、メイヘムのリーダーであるユーロニモスを主人公に、悪魔崇拝やバンドスタイルを逸脱し過激化していくさまを実話を基に描いている。

ブラックメタルを追求する中、ユーロニモスたちはブラックサークルを立ち上げ、いつしかスプラッター映画に影響されて人を刺してみたり教会を放火したり、誰が最も邪悪か競い合うようになる。

その悪名高さからかけ離れた存在に思っていたけど、ユーロニモスや周囲との人間関係から、軽はずみな言動が次第に重みを増して歯止めが効かなくなる若者の未熟さと葛藤が見えてくる。
ユーロニモスとヴァーグの友人とも仲間とも言い難い黒い絆から、対立を深めていくところをみていると2人は結局似た者同士だったのかなと思った。

本気で悪魔崇拝している人たちも中にはいたかもしれないけど、信仰が厚いノルウェーで育ってきた若者にとって、悪魔崇拝は社会への反抗や鬱憤を晴らすには格好のスタイルだったのかもしれない。


メイヘムを知ったのは、普段聞かないジャンルの音楽を聴こうと数年前に思い立った時だった。ブラックメタル怖いだろうな…と思いつつ、代表格とされるメイヘムを最初に聞いて見事に撃沈。曲の完成度と世界観に凍りつきそうになったし、調べれば調べるほどとんでもない話が出てきて、眠れないほど怖かった。
その甲斐あってメイヘム周辺には結構詳しくなったので、この作品でも知っている話が出てきて、それぞれの立場や感情を想像しながら見れた。

ユーロニモスがデッドの幻を見るようなシーンが特に良かった。デッドが自身の脳を撃ち抜いてしまったその強烈な現場を写真に撮り、アルバムジャケットに使うなんて狂ってるけど、実際は彼に強い憧れを抱き畏れ続けていたのかもしれないと思わせられる。

ユーロニモスが主人公なのでデッドの出番は少ないけど、デッドことペルの人生もかなり壮絶。悲惨な経験がそうさせているのは辛いことだけど、彼のデスボイスやリストカットのパフォーマンスは息絶えそうな魂の叫びそのもののようで、やはり一線を画す迫力がある。

話が逸れ過ぎているけど、音楽活動が常軌を逸していく展開も、過激な描写がありつつもユーモラスで青春映画としても興味深いし、ブラックメタルを知っている人ならより楽しめる映画だと思う。

グロいの苦手だから…と悩み続けていたけどやっと見ることができた!
ブラックメタルは特にファッションや世界観がかっこよくて好きなので、そういった目線でも楽しめた。
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