ICU映画部きらきら星

父から息子へ ~戦火の国より~のICU映画部きらきら星のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ドイツ映画祭にて鑑賞

ベルリン在住のシリア人監督が、シリアはイドリブ県に存する反政府武装組織であるヌスラ戦線のメンバー一家に密着した映画でした。冒頭で流れる、「悪夢をみたらノートに記せ、記した後は封印しろと、昔父に言われた」という旨の監督のモノローグがこのドキュメンタリーを包括的に説明するものでした。

日本では、シリアをはじめとした中東情勢に関して海外メディアの後追いであるのに加えて、報じる頻度も少ない中、短い上映時間の中でも現地の様子が垣間見れたのはいい経験かなと思います。「自己責任」だの他者が執拗に罵詈雑言を浴びせるにも関わらず、無視をする人が日本に近頃多いように思われる中で、この映画はもっと劇場公開されてしかるべきと思われます。

サラフィー主義の中でもより過激なジハード主義であり、アルカイダに忠誠を誓う父のもとに育つ息子たち、オマルとアイマンの対比も最後まで映画を見ると虚しさを呼び起こします。

また、本映画の鑑賞前に、末近浩太氏の「イスラーム主義」、池内恵氏の「イスラーム国の衝撃」及び飯山陽氏の「イスラム教の論理」を事前に読んでいると尚理解が進むと思われます。そうでないと、特に父親の主張がただ単に狂気に満ちている乃至カルト的に思われかねないからです。我々からは理解できなくとも、彼らには彼らの論理があること、「不同意に同意」してからの鑑賞を勧めます。