つかれぐま

レオンのつかれぐまのレビュー・感想・評価

レオン(1994年製作の映画)
-
<オリジナル版>
中年男レオンと12才の少女マチルダ。この二人の背徳的関係をどう思うか(許せるか)?を問う映画。「殺し屋稼業」がこの関係が生まれた特殊性に説得力を持たせる。

親・姉・学校・友人・・マチルダはその全てに絶望していることが冒頭で手際よく明示される。とても哀しい境遇だ。偶然出会った中年男を父親、兄、先生、友人として慕うことが出来ない。そういう(年齢相応の)関係で愛されたことがないから、愛し方を知らない。ならばいっそ、究極の関係と言える男女間の愛し方で、この中年男を愛したい。マチルダはそれ以外の選択肢を持っていなかった。

レオンもマチルダとの接し方が分からない。とりあえず彼が差し出したミルクをマチルダは拒む。代わりに彼女が手にしたのは銃。マチルダがレオンに求めたのはミルク(親としての愛)ではなく銃(男性性)だったという巧みな暗喩。

二人の距離の縮まり方が拙速に感じたが、それは終盤の脱出アクションで回収される。深まった関係をアクションで語ってくれる上品な見せ方。二人を追い詰めるのが「法の執行官」たちというのも、それがどんなに純愛でも「法が許さない」という現実の投影。

完全版は未見だが、賛否両論なので興味あり。ただリュック・ベッソンは決して「パーフェクトな監督」ではないので、ディレクターズカット=完全版が最良とは言い切れないのでは。