上層都市に暮らす裕福層が、下層部の労働者たちを意のままに操るべく、解放運動の象徴である女性をアンドロイドと入れ替えてしまう。2026年の未来世界を舞台している、ディストピアSF映画。
民族意識が高まりつつあるドイツ情勢と赤狩りに喘いでいるアメリカ情勢の、ふたつの社会構造をベースにしながら、資本主義社会の崩壊を描いている作品。独特の世界観は、ニューヨークの超高層ビル群から着想を得ている。
あらゆるアナログ技法を結集させた映像世界と、解放運動家役の女優ブリギッテ・ヘルム(アンドロイド役も兼任)の役者根性に醍醐味が集約されている。とりわけ、アンドロイドのはっちゃけぶりには、珍妙な「萌え」を覚えてしまうほど。
文明の発展には、考える人と、働く人と、お互いを尊重する精神が必要とされるのだが、それらを現実のものにしようとすればするほど、高い障壁が築き上げられてしまう。ユートピア思想実現の困難さを実感させられる作品。