【地方都市の空気感】
テレビドラマはもとより、邦画のレベルは年々ひどくなる。芝居も脚本もクオリティが低すぎる。あれは「作品」ではなく「商品」だ。
もちろん鑑賞に堪える作品も作り続けている監督も少なからずいる。そのうちの一人、白石和彌監督も東映が持っていた熱量を見事に昇華させ我々に伝えてくれる。
その白石監督の作品だ。安心して見ることが出来た。
音尾琢真の芝居がちょっといただけなかったが、それ以外の役者はリアルだったし、個人的には筒井真理子が好演に思えた。
そして何より、ロケ地選定やカメラが実に素晴らしい。茨城県大洗町を舞台にしているが、今の地方都市の風景が伝える寂れた閉塞感と、住む者の「マイルドヤンキー的」人間関係が見事にマッチしていた。
一部が錆びついたシャッターや人通りがない商店街、そして昔からの顔なじみが中心のコミュニティー。本当に地方都市がもつ「閉塞感や空気感」の伝え方が秀逸。
そして閉塞感の中で、未来を考えられなくなった若者は「シャブ」に手を出し運び屋となるのだ。