niwajun

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのniwajunのレビュー・感想・評価

4.5
「ページを開けば世界が溢れ出す-インター フォリア フォルゲント」

非常に面白い‼︎
メタ的に映画観る人やサスペンス好きな人は結構気持ちよく裏切られて楽しめるんじゃないかな?♪

ダビンチコードの最後の作品「インフェルノ」出版にあたって実際に行われた驚くべき対応をベースに
欧州を取り巻く社会問題、クライムエンタメ、サスペンスをバランス良くミックスした傑作‼️
提案したいテーマとしては、
「欧州各国の社会風刺」
「商業主義への怒り」
「芸術への愛」
を感じました。

冒頭はアガサクリスティーのそして誰も居なくなったを彷彿とさせる見知らぬ9人が社会から隔絶された場所に集められるシーンから始まります。
個人的な解釈として密室に多国籍の人間が集まる映画は世界のメタファーと捉えて観てます。

翻訳家は登場人物の出身国であるイギリス、イタリア、ドイツ、中国、フランス、ギリシャ、ロシア、デンマーク、ポルトガル9カ国のメタファーと捉えて間違い無いでしょう。各国の簡単な立ち位置とか最近の課題を把握しておくと序盤がとってもスムーズに入って来ます。
普通の映画ならだいたい各国の課題を踏まえて今後どうするかを描いて終わるんですが、本作はそれだけでは終わら無いです。
あと2つくらいメインとなるテーマが入っており3本くらいの映画を1本に綺麗にまとめたような傑作です^_^



ラストの一言真相喋るシーンがちょっとだけご都合主義感あったかなー^_^ま、それ引いても文学への愛情とそれを食い物にするものへの怒りに溢れる素晴らしい作品でした♪






★以下個人的な解説とネタバレ★









「登場人物はメタファー」
各国のメタファーとして扱われる人々は各国への風刺でしょう。

デンマーク:家族を大切にしているが重荷→自国民への福祉充実の政策に対する製作者のひはん。結果自死を選んだ所からもこのままじゃ危ないよ?って製作者のメッセージかな?

フランス:怪我、移民政策において仏は大怪我しましたね。

中国:世界の音頭取り、欧州文化への理解無し。ロシアの次に疑われるのも納得の国ですね。

ロシア:諜報、狂信的、陰謀家。

ポルトガル:外国に労働力が流出(冒頭フランスに行こうとして仕事が無くなってた)。結局今回も若い世代は他国の労働力になるだけ。

ドイツ:ジョークが好きだが固い、理屈屋、メルケルの暗喩。

イギリス:二枚舌外交、資本主義を始めた、
第二次世界大戦までの諸悪の根源。世界の銀行、ミステリ発祥の地。国としては悪いが産み出した名作の数々に罪はないって事かな。
作中一番若いのも、EUから離脱した新生イギリスって事でしょうか。

イタリア:終始空回りで蚊帳の外

9人の訳者はこんな感じで描かれていました。誰が誰と仲良いか、誰と誰がどんな協力関係を結んで行くか国のメタファーと思って観てみるとおもしろいです♪

日本
中盤で出る時刻表トリックは日本が意識されてるんじゃないかな?時刻表トリックと言えば日本ですし!何故か日本のコピー機が持ち上げられましたしね^_^音楽担当してる人も日本人の三宅純さんなのでこの辺は日本へのサービスかな?


「商業主義への怒り」
エリック(アングストローム):資本主義の象徴?作品を商業的に扱う者や主義のメタファーかな。

ローズマリー:ヨーロッパを代表するハーブ=作品を消費し、愛する善良な欧州人?=消費者

2人の関係ですが、エリックの暗証番号がセックスの体位数を表す069で開いた後、ローズマリーが映る為、何らかの(一方的or強制的な?)肉体関係があったのでは無いかな?と予想します。
作中の肉体関係とは商業と消費者の関係であると考えます。メディアが売れる作品を決め、ありがたがって買う消費者。そうじゃないでしょ!消費者よ、立ち上がれ!ってメッセージだと思います。


途中から芸術と商業主義の相反する話がテーマとして出てきました。
良い作品だから売れるってのが理想ですけどね…
作中では売り方がどうあれ作品の良さは変わらない。って言われてたのが心に残りました。
イギリスはかなりアレな国だけど産まれる作品に罪はないって事も言いたいのかな。イギリスは資本主義の発祥の地でもありますからね。


「作品への愛」
ニューシネマパラダイスを思わせるシーン素敵でした♪
終始文学作品への愛が伝わる素敵な映画ですね♪



追記:
協力するくだりが要らないのではと言うレビューになるほどと思います。映画的には盛り上がる演出ですが…
どなたか協力する必要性を説明してくれる人コメント下さい♪
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