初セネガル作品。貧困や難民以外の現代のアフリカを映したものを観たくて、カンヌでグランプリを受賞した本作をチョイス。洗練された映像に終始波の音がついてまわる。最初は愛のない結婚とプラトニックな愛との間で引き裂かれる悲恋だと思っていたら、雲行きが怪しくなり、呪術的なホラーに変わっていく。でもホラーでは終わらない。今に続く、長く痛ましい歴史を背景に、大西洋を渡った男たちの魂への祈りと、残された女たちの救済の物語だった。
都市部の若者たちの現代的な生活がファッショナブルで、主人公のエイダがとってもチャーミング。それとは対照的にイスラム教の戒律や一夫多妻制度に女性は縛られ、男性は厳しい格差社会を生きていた。
アラン・ロブ=グリエの「不滅の女」を彷彿する魂の物語で、ファンタジックな美しい映像はホウ・シャオシェンの「ミレニアム・マンボ」のよう。
神話や語り部によって語られた民間伝承のようでもあり、寄せては返す波音に、哀しみが聴こえる。
セネガルのベルデ岬はアフリカ最西端。奴隷船が出港した主たる港だった。現代は、出稼ぎ労働者が出港していく。
マティ・ディオプ監督はセネガルの映画監督ジブリル・ジオップ・マンベティの姪。マンベティ監督の作品も観ていきたい。
Atlanticにsがつくのはなぜ?