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家なき子 希望の歌声のodyssのレビュー・感想・評価

家なき子 希望の歌声(2018年製作の映画)
3.0
【原作の無理な変更が後半の不出来につながる】

昔懐かしい『家なき子』の実写映画化、となれば見に行かないわけにはいきません。(私が昔懐かしい、というのは日本アニメではなく、フランス文学である原作を小学生向けにリライトした小説のことです。)
私の住む地方都市では吹替版しか上映していないので、そちらで鑑賞。

途中までは、原作との多少の設定変更があってもあまり気にならなかったのですが、ラスト近くになると、設定変更の無理がこの映画の出来栄えそのものに関わってくるのだ、と痛感させられました。

最も問題なのは、原作のリーズを、アーサーの代わりにしちゃったことですね。
これによって、主人公レミの本当の母親が誰なのか、という基本的な構図が変更を余儀なくされてしまう。
なぜならリーズはレミの妻になることがあらかじめ決まっているのだから、リーズをアーサーの代わりにしちゃったら、レミの母親も別人にしなくてはならない。

でも、それって、本質的に貴種流離譚であるこの原作を変更することになるんですよね。

だから、ラストあたりのまとめ方が説得性を欠くのは当然のことなのです。
まあ、ドリスコルにレミが引き取られた後の、ヴィタリス親方の、「これって、活劇映画だったの?」と言いたくなるような活躍ぶりも、無理目なんですけどね。

あと、原作のマチアが出てこない代わりに、レミの歌の才能が前面に出ているのだけれど、これって無理じゃないですかね? だってレミは作品当初で10歳、まだ変声期を迎えていない男の子なんです。変声期をへたあと、どういう声になるかは分からないじゃないですか。それだけじゃなく、作中でレミが歌を歌って聴衆を魅了するシーンが圧倒的に不足している。

というわけで、後半は色々文句を言いたいところがあって、前半の調子が維持できなかったのが残念。
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