タキ

犬王のタキのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
いまや古典の能楽や狂言もちろん歌舞伎もそうだがその始まりは流行りのポップスターを我々が見るのとおんなじ感覚だったと思うと親しみが湧く。琵琶を奏で歌う友一は今で言うロックミュージシャン、大掛かりな舞台装置の上で舞い踊る犬王はミュージカル俳優のようだった。呪いの能面に芸のさらなる精進を願った父親のせいで異形で誕生した犬王は新たな芸を身につけるたびに体の一部分が普通の体になっていくのだが、すべてが普通の人間になってしまった時にそのカリスマ性を失ったようにも見える。そして人々の熱狂を誘うパフォーマンスは友一の命と引き換えに政治につぶされ急速に輝きを失ってしまう。一方、名を捨てず、歌いたい歌を歌い続けた友有は幕吏に殺され友魚に戻った魂は地上を彷徨い続ける。人々に忘れられた時代の寵児の行く末はあまりに悲しいけれど600年もの歳月をかけて2人は邂逅し、ふたりきりだったときの姿を取り戻して天に昇る。売れなかった下積み時代が1番楽しかったというのはファンにはなかなか切ない話だ。
アヴちゃんの変幻自在の声色は犬王のトリッキーな外観によく似合っていたし森山未來はホントにギタリストなのかもと思うぐらいグルーヴ感があった。あまり音楽史に詳しくないのでハッキリしたことはわからないけどクイーンのボヘミアンラプソディ(風)を入れこんでるのだけはわかった。
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