烏丸メヰ

バットマン vs ミュータント・タートルズの烏丸メヰのレビュー・感想・評価

4.8
宿敵フットクランを追いゴッサムシティにやってきたタートルズ。
彼らが出会う、夜をゆくコウモリ・ゴッサムの影バットマン……。

私はタートルズは約30年来のファン、バットマンは各キャラクターと実写映画、幾つかのスピンオフを知っている感じだが、とにかく素晴らしい。
ことタートルズに関しては、ニコロデオン以降のアニメでは、ニコロデオン版からの四人の外見の差を取り入れつつも(子供向けにしていないからだろう)描き方と原作テイストを最も尊重していると思える。
作り手として見せてくれているタートルズという長期コンテンツへの愛と尊重において、CG映画『TMNT』や最悪のアニメ『ライズオブTMNT』、これを書いている段階で最新の『ミュータント・パニック』のどれよりも大きいだろう。

2023年の『ミュータント・パニック!』含め、私はタートルズのダークヒーロー的な存在感を「タートルズ自らに否定させる」等ポリコレに靡くような多様性代弁利用だとか、社会との架け橋である姉貴ポジションのエイプリルを子供にする、偉大な師であり父であるスプリンターから威厳を無くす等の、影のない作風が本当に好きではない。
ミュータントである事に彼らが彼らなりの意味や誇りのようなものを持っており、外見は醜く異端な生物・だが正義の心を持ち・しかも古の忍者の技を使う、というヒーローとしての彼ら本来の魅力が最近否定され過ぎているように思う(時代的に石ノ森章太郎ヒーローが改変されていくのと似た、やや仕方のない流れを感じる)。

その点本作はバットマンの空気感に合わさった事でタートルズの持つダークヒーロー感が強調され、更にティーンエイジャーとしての個性がバットマンやロビンらとのやりとりの中で上手くかみ合っている。
別に彼らが殺人をするわけではないが、殴れば血が出る世界観でのタートルズのバトルをアニメーションで観るのは本当に新鮮だった。

反対にバットマン世界のキャラクター達は、タートルズ世界の設定を活かしたことでストーリーの中でかなりびっくりな戦いぶりを見せるのだが、これはバットマンファンからしたら少しキャラ崩壊に感じてしまう人もいるかも。

有名な原作コミックの絵をなぞるシーンの他、
「ナプキンを使って」「なんで?」
はタートルズの初代実写シリーズにある台詞。意識されて引用されたとしたら嬉しい驚きだ。

バットモービルと並走するタートルワゴン、そしてエンドロール(例えるなら『ワンピース』の単行本の表紙に、絵柄やポーズを合わせてアベンジャーズの面々が描き込まれるくらいのコラボ!!)も涙が出るほど嬉しかった。
“コラボならでは!”の楽しさと感動が存分に味わえる、満足感の高い一作。
烏丸メヰ

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