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The Last Days of Pompeii(英題)のScriabinのレビュー・感想・評価

The Last Days of Pompeii(英題)(1913年製作の映画)
4.5
一つとして使いまわしと思わせるような背景幕やセットがなかったことに感動。観客に物質的な欠乏を感じさせず、物語に入りこませる。冒頭部分の、街路でカメラを動かしながら登場人物を紹介していく鮮やかなショットといったら。初期映画は固定カメラで舞台を映したものでは全然ないことがよく分かる。発想は舞台の役者紹介なんだけど、このイメージが作れるのは映画だから。そして最後のショットの美しさ!!1913年は長編映画の幕を開いた年だった。

撮影セットが本当に素晴らしい。遠景の描き込みが細かく、中景にも様々な建物を置いて、リアルさを出している。白い鳩とふくろうのアレゴリーは結構唐突だったけど面白かった。同時代の他の映画でもこういう象徴あった気がするんだけど何だったかな……噴火のシーンは、そこだけ映写されすぎたせいか、かなり損傷している。

ニディアが醜く描かれているのが気になった。目の見えない人の動きとしてはリアルなんだけど、ニディアに共感させる人魚姫的な物語として、後の演出と比べても異質だと思った。あとジュリアの役割がニディアに集約されていて、筋としてもニディアの心情描写としてもかなり分かりやすい。グラウコスの発狂は、らりったおやじがふらふらしてるだけでかなり美意識に欠けるが、ニディアの演技同様かなりリアル。

そしてこれもアルマ=タデマに影響を受けた映画と言われているものの一つ。特に0:22:29~25:12 イオ—ネーが入浴するショットは、"Favarite Custom" や "The Apodyterium", "The Frigidarium" などのアルマ=タデマのテルマエ・シリーズを全部詰め込んだかのようなショット。

一番好きなのは、0:43:12~44:10 でイオーネーとグラウコスが木の下で雨宿りするショット。羊飼いの道案内がプロフェッショナルすぎる。何も無駄なことはせず分かりやすく説明する。この時ばかりはグラウコスも大仰な演技をやめて、真剣に道を尋ねる人になっている。
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