キネマクロラ

スノーベイビーのキネマクロラのネタバレレビュー・内容・結末

スノーベイビー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「この貴重な生き物を守るには、人に知られぬところでそっとしておくのが一番なのだ!」

ディズニー・ピクサーが安定の人気を博す中、ドリームワークスは安定のビデオスルー。ぐぬぬ、なぜ王国に対抗できそうな良作に限って日本では公開されないのか…。誰か圧力かけてませんか?(笑)

ちなみにベトナム、フィリピン、マレーシアで公開中止になってしまったのは作中でちらりと映る地図に領有権問題に絡む九段線が描かれていたためで、話自体には全く問題はありません。そんなところでも不遇な映画…。

本作は米国DWAと中国パールスタジオ(旧オリエンタル・ドリームワークス)の共同制作。原題の「Abominable(忌まわしい)」はイエティの英訳「Abominable Snowman」からとったようですが、仮題の「Everest」の方がまだ良かったのでは? 個人的には邦題の「スノーベイビー」が一番しっくりくるかも。いっそ次回作も「〇〇ベイビー」にして、「ボスベイビー」から続く三部作とかにして欲しい。

ストーリーは型通りの王道。ところどころにスパイスを効かせているものの、DWAらしい毒がないなぁと物足りなく思っていたら、最後にしっかりメリダとエルサをdisってくれました。あれ、そうですよね? だって分かりやすくネズミとか連れてたし。ただあの展開からすると、もしかしてピクサーはディズニーから離れたがっているの!?とか勘繰ってみたくなる。あとキャプテンが最後まで苦労人でした。(合掌)

映像美はさすがのドリームワークス。中国の街並みや風景がこのうえなく美しく描かれます。キャラ作りもそつがなく無く、中でもイエティの愛くるしさは特筆もの。猫バス級にあの毛玉にモフりたくなります。っていうかイエティの肌の質感がまんまぬいぐるみ(笑)。蛇とか亀とか脇キャラもいちいちラブリー。
中国文化もディズニーのような「現地の文化をきちんと調べ上げて描いてます!」みたいな変な気負いがなく、サラッと自然に描いているのがむしろ好感。イーは学校とか行かないのか、と思ったけど、ドアに倒福が飾られていたから春節(=正月休み)ってことか、と後から納得。

画は3D映えするシーンの見本市みたいな感じなので、3Ⅾで見るとかなり見ごたえがある。だけど2Ⅾだとその狙いが半減してしまうのでご都合主義的な話運びだけが気になっちゃうかも。例えばイエティが花びらを吹き付けるシーンも3Ⅾだと「ワオ!」なんだけど、2Ⅾだと「なんだかな…」だろうし。
ただこの映画、残念ながら日本語吹替入りの3Ⅾ盤が存在しない。なので海外版3Ⅾ+日本語音吹替版の2枚でシンクロ上映させるというひと手間が。まぁ2枚買ってもディズニー映画1枚分よりも安いんですけどね。

アナ雪2ですら3Ⅾ上映されないところを見ると日本の3Ⅾ市場は完全に死滅してしまったのでしょうか。いいえ、私は3Ⅾ愛好家という希少な生き物がこの国のどこかにまだ生息していると信じています。そしてたとえ見つけたとしても晒し物にせずにそっとしておいてあげて欲しいと思うのです。