タキ

オフィサー・アンド・スパイのタキのレビュー・感想・評価

3.9
知識なしで見るとヒゲのオジサン大渋滞でちょっと難しいかも。公式サイトの町山×内田対談で当時のヨーロッパでのフランスの立ち位置がわかって理解の助けになる。視聴前、もちろん後でもぜひ!↓
ポランスキー過去作からドレフュス事件が起きた19世紀フランスの政治状況など徹底深掘り!!
町山智浩×内田樹緊急対談!
映画『オフィサー・アンド・スパイ』公式サイトhttps://longride.jp/officer-spy/

フランスは自由の国のイメージが強いが、これがドイツナチス台頭以前の話だと思うとフランスの闇はかなり深いものがある。当時反ユダヤ主義はそう特別なことではなかったらしい。ドレフュスの冤罪を訴え続けたピカール中佐がユダヤ人が嫌いというのも政治信条というより時代の流れみたいなもので、つまり信条を曲げてユダヤ人を救ったというような話ではない。それどころか彼はノンポリのようにも見える。ただ彼はフランス軍をとても愛していた。確たる証拠もないままスパイ容疑でユダヤ人のドレフュスを軍法会議にかけ、偽証や偽造までして隠そうとしている。無実の人間をディアブル島に送ってホンボシのエステルアジを野放しにしてしまっているわけだ。これはおかしいこれはフランス軍のあるべき姿ではない、不正を許さず間違いを正す一心でやったことだった。軍部では四面楚歌、民衆も反ユダヤばかりの中にこんな人物がいて、最後には大臣にまで登りつめていると考えると闇夜に一本、スジの通った希望の光が見えてホッとする。ラスト、ピカールやゾラに救われたドレフュスは自分の階級が不当に低いのではとピカールに直談判しに来て聞き入れられずに追い返されるのだが、ドレフュス自身がピカールを評して自分の職務をまっとうしたとしているだけあって大臣のとるべき態度だと納得した感があって面白かった。
町山さんによると近年ポランスキーやウディアレンやチャップリンを公然と褒めるのは難しいらしい。作品と製作者を切り離して考えるべきか否か、日本でも芸能事務所創業者による空前の児童虐待案件が世論をにぎわせていて、私もずっと考え込んでいる。
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