爆裂BOX

BLISS ブリスの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

BLISS ブリス(2019年製作の映画)
3.8
「人間まがい」や「ヴェテラン」のジョー・ベゴス監督によるサイケデリックなドラッグムービーの怪作です。
画家のデジーはスランプに陥り数か月間作品を仕上げられず、クライアントから援助を打ち切られてしまう。家賃も支払えなくなった彼女は現実逃避から売人の友人が勧めるドラッグ「ブリス」を吸引すると意識を失ってしまう。自分の部屋で目覚めると、物凄いオーラを放つ絵が描かれており、それを完成させる為デジーはブリスに溺れていくが…というストーリーになっています。
冒頭に「光がチカチカする映像が出るので気を付けてください」というテロップ出るので警戒しますが、オープニングのスタッフロールのシーンは確かにかなりチカチカ映像でしたが、本編はサイケデリックな色遣いでチカチカはあるものの、オープニングほどじゃないので安心しました。
売れない画家の女がドラッグに手を出してハマってどんどん堕ちていくという話ですが、映像もまた、原色のピンクや緑活かしたサイケな映像の連続で、ドラッグキメてハイになってる時に見える映像という感じで見てるうちに何だかこっちもハイになってきそうな感じがする正しくドラッグムービーという感じですね。サングラスかけて口元血に染めたデジーが夜の摩天楼疾走する画は何とも言えない美しさも感じました。
前半はサイケデリックでキメキメな映像で、デジーがドラッグに溺れながらもそれによって何かに目覚めてスランプから脱して、意識を失った状態で絵を作成していく様が描かれますが、後半、一緒にブリスを決めた女友達がトイレで女の首に噛みつく所を目撃し、自身の身体に起きた異変を自覚していく所から一気にホラー色も増してきます。
顔に噛みついて鼻喰いちぎったり、腕の肉や首の肉喰いちぎったりと後半になるとドンドンゴア描写も盛り込まれてきます。特に吸血鬼と化したデジーが彼女を心配する男友達クライヴの首パッカーンする所一番印象に残ったかも。杭を胸に突き刺された吸血鬼がドロドロ溶けていく所も良かったですね。
クライマックスのデジーと同じく吸血鬼になった女友達が部屋を血に染めながらキャットファイト繰り広げる所は照明もピンクで一層卿れ唸映像になっていた気がします。
主演のドーラ・マディソンの危機迫る演技も素晴らしいですね。特に最後裸で血にまみれて踊り狂いながら絵を描き上げるシーンは圧巻でした。
心配するクライヴに向けてデジーが放つ「アンタと飲んだくれて絵を描かないくらいなら死んでも描く方を選ぶ!」という台詞は、絵画であれ小説であれモノづくりを目指した人なら大なり小なり一度は抱いたことのある感情なのかもな、と感じました。だから絵を描き上げたデジーが恍惚とした表情浮かべながら朝日に照らされて四散するシーンにも何だか爽やかさを感じましたね。
ラストに映されるデジーが描き上げた絵は禍々しさと神々しさが合わさったような物を感じられてなんか圧倒されるものがありました。
サイケデリックで強烈な映像等間違いなく好き嫌いが別れる怪作と呼ぶにふさわしい作品だったと思います。