好きです。カウボーイものかと思いきや字面通り、1匹の牝牛を巡るオレゴン州の片田舎で起こる、美しくも静かなブロマンスでありつつ、きちんとアメリカ的な富と欲望を巡る物語になっていて驚いた。逃避行という意味ではジャームッシュ『ダウン・バイ・ロー』が思い出されるけれども、ケラケラ笑いながら観られるジャームッシュに対しこちらは豊かな情感、身体に訴えかけてくるフード描写や自然、そして静かなスリルに酔いしれる一本。流石のA24、作りがとても丁寧。
ドーナツを作り始めるあたりから一気にストーリーが加速して面白くなる。ドーナツで財を成すとか考えるだけでワクワクするし、おなかが空きます(2人が出会うまでの初め30分は退屈で寝た)。
緑ジャケットの、ドーナツ列を割り込みされても何も言えなかった控えめなあいつが最後の最後で大逆転していてなんだか胸熱でした。ラストをラストまで描ききらないのもおしゃれ。良い映画です。おすすめ。
