垂直落下式サミング

ヘルウィンの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ヘルウィン(2019年製作の映画)
3.5
同級生を惨殺した高校生殺人鬼・トリックが、警察の銃弾を浴びて七階から落下するも姿を消した。そして、毎年ハロウィンの日になると、町に仮面をかぶったトリックが現れて大量殺人をおこない町を恐怖に陥れる。真相を追う刑事たちは、やがて真実に迫っていくが…。
『少年は残酷な弓を射る』だとか『エレファント』のような、学校でのイジメにキレる陰キャティーンエイジャーを描くのかと思ったら、刑事たちがトリックのことを調べていくと、人相から人となりまでバラバラで、家族の繋がりもなく写真すら残っていない。
さて困った黒人の刑事さん。神出鬼没のトリックの動向があまりにも不可解な為、本来なら目に見えるものしか信じないような性格の人なのに、自分の追いかけているものは手に終えない闇のパワーを持った存在なんじゃないかと、次第にオカルトを受け入れてしまっている様子をみせてくるのは、いい感じにキャラクターの人間性を踏みにじるドSみのある脚本。気に入りました。
実はこうでしたと、タネ明かしでうまく行きすぎるきらいはあるが、最終的な物語の落としドコロには好感がもてる。悪は駆逐し得ないまでも、打ち勝つことはできる。そうだとも。
『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』でアメリカのハロウィンには、オバケ屋敷が賑わう文化があることを知った。日本に住む僕らの感覚だと、ほとんどが複合レジャー施設に併設されているものだから、それ単独で採算がとれるモノじゃないと思ってしまうのだけれど、アメリカではハロウィンのシーズンになると各地でオバケ屋敷があらわれて営業がはじまるらしい。すごい文化。いいな。
若者がバカそうだから田舎ホラーなんだろうなと思いきや、意外にもニューヨーク州での出来事だそうだ。舞台はベントンという町。ハドソン川にかかるニューバーグビーコンブリッジが出てきて、殺人鬼の実家はその川沿いにあるっていう設定。世界一の都会のそばにも、こんな風景があるんだなと。アメリカをちょっとだけ近く感じた。