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花束みたいな恋をしたのochoのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

終電を逃したふたりが出会い恋に落ちる物語。
日本版のbefore sunriseのようにはじまり、before midnight みたいな倦怠感を経て、そして…。

最初から、別々のカップルが鉢合わせるところから描かれるので、恋は実らなかったのだというのは頭に置きながらも、恋の始まりに引き込まれていく構成が魅力的な一本。


たまたま出会った2人は、もしかしたらそこじゃなくても他で出会っていたかもと思うほど、好きなものや感性が似通ったふたり。履いていた靴も同じコンバース。

結局その日のうちに麦(菅田将暉)の家に行くも、
ピュアラブだからこそ何もなく、
ただただ、じんわり優しい時間が流れる。愛おしい。

雨で濡れてしまった髪を乾かしてくれる時間。
お腹空いて夜中に作る焼きおにぎり。
麦が書いたイラストを好きだと言う絹(有村架純)。
ガスタンクばかり集めた動画。
朝帰りした絹の"今はまだこの感情に浸りたい"と言う感覚。

お金がなくたってなんだって、恋すれば、こうやって生活に彩りを持つことはできるのだと思い出されます。

2人の感情の機微をうまく捉えて表現していて、
邦画らしい繊細さが素敵。

付き合いだした2人のルールがすごく素朴で、
でもそこに美学が詰まってる気がしました。
あれやこれやと言ってしまう自分…くぅっ(大人だからね、ダメの経験値も増えるのよ)

でも…
"はじまりは、終わりのはじまり"

ふたりでいる"楽しい生活を現状維持させるため"にそれぞれ仕事につきますが、生活の違いがすれ違いを生み…
ひとことがきっかけで喧嘩が増え、なんでこんなことにと…
2人でやりたいと言っていたことを1人でやることが増える

絹ちゃんは絹ちゃんの中で、現状維持を努めていたし、でも出会った頃の麦くんではなくなった麦くんは、プレッシャーからか、発言も中身もどんどん変わってしまい…(男側の気持ちも分かるが…)
前時代的価値観を押し付け、意味不明なプロポーズ(に見える別の何か)をしてしまう…

そのうち喧嘩すらもしなくなり、あんなに絶えることのなかった会話がなくなり、お互いへの感情が無くなっていく。

もうダメだと分かっていても、どう切り出していいか分からないふたり。
楽しかったから、楽しかった日に別れよう。と。
観覧車乗るあたりから落涙してました。

覚悟の決まっている絹ちゃん、なんとか方法はないのか、その、荒み切った心で繋ぎ止めようとする麦くん。そこに現れるかつての自分たちのような若いカップル。明らかに自分たちが失ってしまったものを見せつけられ、別れを決める。
もうめっちゃ辛い。涙

ただ、絹ちゃんが、コリドー街で名刺配ってるダルい男たちにも、転職先のセクシーオダジョーさんにもひっかからずにちゃんと一つの恋終えたのがよかったです。

恋愛って生物だから
それすぎると、引き分け狙いでボール回してるって。
2人の寂しさの方がよっぽど寂しい。とオダジョーさんの言葉すごく身に染みます。

結局、破局はしたものの、
最後は割と爽やかにまとめてきて、嫌な気分ではなく終わった。ふたりともやり切ったような清々しささえある。まるで戦友のような、そんな関係性。

とにかく菅田将暉かわいい、有村架純ちゃんもほんとかわいい。透明感すごい。演技もナチュラルで引き込まれる。それだけでもオススメできる映画です。
ocho

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