Oto

エルヴィスのOtoのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.4
悪徳マネージャーの視点から描かれた、エルヴィスの伝記映画。
ビートルズやストーンズと違ってほとんど通ってこなかったのもあるけれど、終盤の実際の映像が一番胸を打つので、果たしてフィクション映画として描く意味があったのか疑問。

西川美和監督が「局所的なものを普遍的に変えて、広く見てもらえる・自分ごと化できるようになるから、報道ではなくフィクションをやっている」という話をしていたけど、この映画に関してはドキュメンタリー以上の何かをあんまり感じられなかった...。

「白人が黒人の音楽で腰を振る」というタブーを犯して世界一の人気者になったこととか、ショーマン(ペテン師)を自称する大佐との関係性とか、知らない事実がいろいろあったのは面白かったけれど、
フィクション的な工夫としては画面をMVのように分割するような演出くらいしかなくて、俳優の色気も本物には敵っていなかったし、LIVEの熱量も『ボヘミアンラプソディ』を超えないし、期待外れだった。

不良の音楽とみなされての規制、親やマネージャーをめぐる関係性の葛藤、映画出演をめぐる問題、スターならではの妻子との衝突、孤独とドラッグ...。いろんな問題を詰め込みすぎたせいで、160分もあるのに何かを描き切れていないというか、よく描かれる葛藤を薄くなぞっただけに見えて、どこかにフォーカスして描き切ってくれた方がよっぽど感動したのにと思う。

「愛に殺された」が結論だったけど、誰もに愛されたが故に、誰にも本当には愛されなかった、というのが本筋なのであれば、マネージャーに裏切られた悲しみとか、家族に会えない苦しみとか、もっと描くべきことがあったように思う。
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