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バビロンのanemoneのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
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赤、金、黒、熱気と狂気の楽園
下品さにすら生のエネルギーを感じる
マーゴット・ロビー演じるネリーの、満ちることのない渇望

サーカス、オリエンタリズム、男装の麗人
その中心で踊り狂う彼女の美しい四肢
トランペットの高音と下腹部に響くバリトンが最高にカッコいい!
ジャズなんだけど、"coke room"を聴くとピルエットしたくなる
小さなサーカスを覗き見しているよう

レディ・フェイ・ジューの艶かしさ
自分の魅力を分かっている、チャイナドレスやタキシードのエロティシズム

サイレント映画を撮る様子はまさに天地創造で、人々が生命を燃やしていた
小さな殻に閉じこもって生きている自分の脳漿を、焼き尽くしてしまいそうなパッション
大乱闘の中オーケストラが演奏する現場は、感動の渦だっただろう

時代が変わり、少しずつ舞台は翳りゆく
夢は終わり、スターの煌めきは哀愁と共に消えた

それでも、映画館に行けば夢が蘇る
時代の幽霊や天使と時間を共にできる
改めて、映画が好きだという気持ちに気づかせてくれた

ネリーのモデルとなったクララ・ボウは過酷な家庭環境で育ち、ベティ・ヴーフのような風貌と官能的で華のある演技でサイレントの人気者に舞い上がるが、その後トーキー映画の波に乗れず映画界から姿を消した。ネリーの"今度こそやるわ、もうみんなをがっかりさせたりしない"というセリフは、ワイルドなネリーの、そしてクララの、ただ認めて欲しいという儚い願いが込められているように感じた。
ネリー、クララ、マーゴット。彼女達は深く繋がっている。
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