タキ

アンテベラムのタキのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
3.9
最初の南北戦争時代の綿花プランテーションで働かされる黒人差別のシーンがまぁ長い。辛いシーンが続くので挫けそうになる。劇伴もずっと不穏でザワザワする。でもジッと見てるとなんだか不可解なセリフや動きが挟まれていると気づく。拷問中に名前を言えと執拗に強要される。壁に掘り込まれた子供の描いたような落書き。燃やされる綿花。特に奇妙なのは初対面のはずの人物に脱走の期待を背負わされているところだ。なぜかみながエデンを知っている。
携帯電話の音で現代のヴェロニカ(ジャネール・モネイの一人二役)が目を覚ます。彼女は社会学者でありベストセラー作家でみるからに成功者だ。ある日、ニューオリンズへ講演に出かけ、アメリカ南部に今も残る黒人差別を受ける。そこで過去と現代がクロスし始め…というSFホラーのような仕立てになっている。たぶん色々なホラーのオマージュなんかもあるような気がする。白いドレスの少女はシャイニングを思わせる。
内容は不穏だが、製作者のいう通りイースターエッグのように隠されたモノや出来事が終盤パチパチとハマっていく感覚は楽しい。
今も続く「南北戦争的な内戦」を表現したかったというメッセージは伝わったが、その先はどうだろう。無邪気に「仲直りした?」と聞く幼な子の声が虚しく響くラストだった。

気鋭監督コンビが明かす! ジャネール・モネイ主演スリラー『アンテベラム』は“二度と経験したくない悪夢”から生まれた!? ↓

https://www.banger.jp/movie/67190/

「ジェラルド:アンテベラムは「内戦以前」という意味で、アメリカでは、その内戦が南北戦争を示すことが多いです。過去の南北戦争はもちろん、現在も起こりうる南北戦争“的”な内戦を、観客にイメージしてもらいたかったんです。」
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