華麗なる加齢臭

ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

2.4
【映画じゃない金のかかったTVドラマ】
長野での「男原田の大ジャンプ」はリアルタイムで泣いたし、いまだに胸を熱くする。故にロードショー公開を楽しみにシアターまで足を運んだのだが・・・

最初とりあえず良かった点を挙げれば、聴覚障障がい者のジャンパー高橋竜二を準主役としたこと、濱津隆之が原田のキャラクターにマッチしたことくらいか。もちろん田中圭の芝居も悪くはなかった。(原田のキャラを考えれば大泉洋も良いが今じゃ助演じゃ無理だろうね)

反面、ツッコミどころは満載だ。
まずもってあまりにも監督や脚本にゲンナリした。
本来、俳優の芝居は「作品」のためにあるべきだ。俳優のために映画があるわけではない。決して芝居が上手いと言えない、土屋太鳳がセリフを言うごとにカット割りが変わりシーンとは全く相いれないメイクをした彼女の顔がスクリーンの中心に写し出される。
これってテレビドラマじゃん。関係者は今年のアカデミーを受賞した「ノマドランド」でのフランシス・​マクドーマンドの芝居観たのだろうか?ノーメイクであっても、キャリアベストの芝居で迫ってくる。

あるいは、この手の映画にはお決まりのアイドル出演として小坂菜緒が黎明期の女子ジャンパー葛西 賀子(映画では小林賀子)を演じているが、芝居、キャラクター設定が本当にひどくて悲しくなった。
これまた比較してしまうが、小坂菜緒は100円の恋でボクサーを演じた安藤サクラの芝居を見たら「女優」と名乗ることが恥ずかしくて出来ないだろう。運動神経の問題でもあるがジャンプの練習風景も見るに堪えない芝居だ。
また、キャラクター設定として父親が大反対しオリンピック会場まで追いかけてくるが全く無理な話だ。葛西は小樽小樽ジャンプ少年団出身だが道具の購入からシャンツェの送迎まで親の協力がなければ絶対に無理だ。ジャンプに限らず少年少女のウインタースポーツは親の協力がなければ100%出来ない。

何も考えずにスクリーンから伝えられるストーリをただ追いかけ「感動した」という鑑賞方法は否定しない。しかしそんな観客が多数派になれば日本の劇映画はますますレベルが低下してしまう。