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パラダイス・ロストのKKMXのレビュー・感想・評価

パラダイス・ロスト(2019年製作の映画)
1.5
 いや〜、観づらいガーエーでした。本作のテーマは、愛する人を失った後の再生という自分の大好物でしたが、コラージュ的な作風と演劇っぽい演出が肌に合わない……というか、クオリティが低い。端的につまらない作品だと感じました。


 訴えかけてくるものはポジティブで希望があり、清々しく感じました。特に、日常描写を重視している点は好感が持てます。日々の生活を象徴する食事シーンが多く(しかも孤食ではなく様々な人たちと食卓を囲む)、新しい居場所や出会いによって再生がなされていく主人公の姿は、なかなか良いと感じました。


 しかし、ゴダールっぽい断片的な作風は結構難解で咀嚼しづらい。しかも、ゴダールみたいに洒落ておらず、なんか全体的にダサいんですよ!だから観づらい!

 日常を生きることがテーマなので野暮ったい画になるのは致し方ないけど、野暮ったいものを野暮ったく撮っているように思え、観ていて苦痛でした。
 また、キャラ造形の細いところが不自然でダサいのです。亡くなった主人公の恋人の母親がパティ・スミス好きで自らをパンクと呼ぶのですが、無理しているように思えてキツい。主人公の弟はアンチレイシズムのデモに行ったりするのですが、上っ面な討論とかしていてダサいです。そのせいで、パンクやアンチレイシズム自体がダサく思えてしまう。
 脱力ギャグの画がこれまたダサい。森を彷徨う幽霊(死神?)の手がてろんと垂れ下がったクラッシック幽霊の手をしていて、ガチならば痛いしギャグならば寒い。パンク母の夫であるギタリスト父がエアギターするシーンとか、死んだ息子がそれに合わせてステップ踏むとか、失敗したジム・ジャームッシュって感じでキツかったです。
 一事が万事こんな雰囲気なので、急に舞台っぽくなって登場人物が詩を朗読し始めたりすると、ただでさえ違和感が強いのに倍増されるように感じます。
 なので、テーマは良いけど説得力に欠けるのですよ。詩やイメージの演出で登場人物の変化を描くもスマートでないため解りづらく、伝わりづらい。その割には突如キャッチーな言葉をブッ込んだりしてくるので、バランスも悪く感じました。


 センスって、才能的な要素が強いように思えます。もともとセンスのない人がセンスで勝負しようとすると大怪我するな、と本作を観て思いました。

 福間監督は詩人として大成されているようですし、大学教授や翻訳家としても活躍されているそうです。本作を観て、福間監督は映像ではなく文字のセンスを持った人なんだろうなぁとしみじみ思いました。
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