亘

最後にして最初の人類の亘のレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
3.5
【壮大な体験型アート】
辛抱強く聞いてくださいー人類が絶滅してしまうかもしれない。そんな20億年先から1人の女性が必死に現在の人類に助けを求める。彼女が語るのは壮大な物語だった。

アイスランドの音楽家ヨハン・ヨハンソンが監督し、ティルダ・スウィントンガナレーターを務めるSF叙事詩。ストーリーがある作品というわけではなく、ナレーションにより今から20億年間の地球や人類の変化とお願いが語られる。いわば「第4の壁」を超え語り続けられるのだ。そして壮大な音楽と廃墟のようなモニュメントもまるで観客に訴えかけてくるようだった。

居間から20億年経つまでに人間は環境の変化に直面しほかの惑星への移住を模索し続けた。しかし太陽の変化もあり一度は移住に成功した海王星でも人類の絶滅の危機が近づく。女性はそれまでの経緯も含め太陽系規模の壮大なストーリーを語る。ただ映像の雰囲気もあまり変わらず単調なため「辛抱強く聞いてください」というセリフの通り辛抱が必要かもしれない。

とはいえ本作は、見るならば映画館で見るべきだろう。音楽家ヨハン・ヨハンソンが監督ということもあって、音楽は壮大で時に交信の音が乱れたような音響演出もある。また延々と映し出されるユーゴスラビアの戦争記念碑は廃墟のようでもあり、まるで人類のこれまでの軌跡を示して訴えかけてくるようである。これは家のTVだとおそらく体感しきれない。ストーリー性はあまりないが、宇宙の壮大さを感じる体感するアートとして興味深い作品だと思う。

印象に残ったセリフ:「辛抱強く聞いてください」
印象に残ったシーン:緑色の点が光って交信するシーン。
余談
本作の原作はオラフ・ステープルドンの1930年の小説『最後にして最初の人類』です。
亘