8歳のサシャの静かな絶望が胸を衝いた。
頑張っても無駄。
そんな言葉が出てくるほど心は追い込まれているのに、それを見せようとしないし、話さない。それでも涙はぽろぽろ溢れてくる。
トランスジェンダーのサシャと家族を追ったドキュメンタリー。
バレエ教室での理不尽な扱いにも、微笑みさえ浮かべて静かにその場に馴染もうとする幼いサシャ。
踊るのが好きなようで、庭では楽しそうに踊っている。うっとりとした表情で踊る彼女はとても美しい。
カメラはどちらかと言うと社会問題を切り取ると言うより、サシャと家族に寄り添う形だった。
その為か私の心の中で、男の子の体で心は女の子、から、サシャという女の子、に捉え方が変わった。そうすると周りの社会で起きている事がむしろ不思議に思えてくる。
一人じゃないと伝えたかった。
彼女は既に十分に強いし優しいように見える。
おそらく闘うべきなのは彼女ではなく、無知で頑なな私達自身の心なのだろう。
ジェンダー規範は本来空虚なのだ。