宮崎監督の作品で一番好き。一見よくある日本の日常の中に非日常な要素を入れ込み不穏さを演出するJホラーマナーで出来ている作品。手法自体は然程目新しくはないがその要素の配合の匙加減が絶妙。フクロウや顔にトイレットペーパーが付いたDJなど一歩間違えたら奇抜なアイデアの詰め合わせになってしまいそうな所を避けている。なおかつシンプルな切り返しとアップを多用した役者の演技、表情に信頼した作りにもなっているので単なる作家性をこれ見よがしに主張した代物ではないのが素晴らしい。エロ動画サイト、スマホ、ライブチャットなど現代的なモチーフを大量に取り入れつつ、社会批評的な目線を前傾化させていないのも良い。不穏さを演出する小道具としてそれぞれ用いられていてジャンル映画としての快楽をきちんと用意してくれる。そういう意味で「デーモンラヴァー」や「パーソナルショッパー」を思い出した。アサイヤスが誉めるのも判るこのバランス感覚。jin doggのシャウトが響きわたる主題歌は勿論、音楽に配慮が行き届いているのもポイントが高い。エンドロールがカッコ良い日本映画というだけで貴重な存在。こういうクールなホラー映画は日本には本当に少ないのでこの作品を境にもっと作られて欲しい。
