ちろる

風船のちろるのレビュー・感想・評価

風船(1956年製作の映画)
4.1
どこか適当でふわふわ風船のようにいれば、騙し騙されてもそんなに傷つかずに生きていける。
どうせこんなもん。
なんとなくフワフワとしてたほうが楽だけど、そんな人間たちの裏で、一生懸命生きてる純粋な人間たちが少しずつ傷ついていることを彼らはきっと知らない。

「自分が信じたことに誠実だったことのほうが大切だ。」
一代で財を成した元画家の父親がリタイアするときに放った言葉がすごく染みた。

立派な父親にも救いようのない冷淡なドラ息子は父親の愛の形にと気がつかず、息子を甘やかしすぎた母親と転落して行くがいい。
川島監督の作品としては少々辛辣すぎるほど、しょうもない人間たちをクローズアップして描いて胸がざわざわするけれど、まるでそのバランスを取るかのように天使のように純粋な珠子さんがこの殺伐としかけた作品の救世主となっていてとても良かった。
裕福になってから得たものと失ったものとは・・・

完全に二極化した家族の姿を見て本当に愚かなのはどちらかは明らかなのだけど、少々説教じみた内容になりそうな物語を、ラストにとびっきりかわいい珠子の笑顔でほのぼのとした気持ちになれたのは良かった。
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