華麗なる加齢臭

ヤクザと家族 The Familyの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
5.0
【ラストは納得いかないが名作】
昔ながらのヤクザの世界は義兄弟や親子の盃など、、まさに「疑似家族」の世界である。そのヤクザ世界での「家族」や「繋がり」をテーマとしている作品だ。ヤクザ映画でもあるので群像劇的でもあり、権力闘争も描かれエンタメ作品としても一級品だった。

「疑似家族」や「家族」をテーマとした作品と言えば、「万引き家族」や「パラサイト」が記憶に新しいが、それら名作に引けを取らない仕上がりであった。「新聞記者」で第43回日本アカデミー賞を総なめにした藤井監督の代表作の一つになるだろう。

ヤクザ映画としての視座から評価すると、近年の傑作「虎狼の血」が、東映ヤクザ映画へのオマージュであったことに対し、この作品は金子正次脚本・主演の永遠の名作「竜二」(1983年)の系譜に属するものだ。
堅気になる決心をするが、結局は暴力により破滅をしてしまう。
----以下ネタバレを含みます-----
そして、ヤクザ映画として救いを感じたのは、北村有起哉演じる柴咲組若頭、中村努をはじめ、14年間の間に衰退した組を去る者はあっても、裏切る者がいなかったことだ。ヤクザ映画といえば「仁義なき戦い」に代表される様に、ウラギリにより主人公が窮地に陥るパターンが多い中、「虎狼の血」同様に組織に対する忠誠が貫かれた。

また、疑似家族の視点では、父性の象徴として柴咲組長、舘ひろし演じる柴咲博との関係が強く印象に残るが、まさに疑似兄弟である義兄弟の関係となる中村務若頭や、山本を兄の様に慕う木村翼の存在も大きい。
山本が最終的は復讐を行うのは、弟の様に思う木村に殺人させないためであろう。

その木村翼を演じた磯村勇斗の芝居が、期待していなかったこともあり一番抜き出ていた。が、もう一度、彼の芝居を見るために劇場に足を運んでも良いくらいだ。

さて、最後になるが、唯一納得できなかったことは、細野竜太(市原隼人)に刺されることだ。過去があばかれ、全てを失った細野が自暴自棄になり山本賢治を刺殺するのだが、どう考えても無理な気がする。もし刺殺するのであれば、山本ではなくSNSに投稿した産廃会社のスタッフだろうし、百歩譲って山本を殺すのでれば、その後自分の命を絶った方が自然だと感じた。

そしてエンディングテーマの字幕は余分だ。

追記)犯罪組織と家族をテーマしたと言えば、ゴッドファーザー三部作が名作中の名作だが、あちらは組織における疑似家族ではなく、本当の家族が中止だし、あとグッドフェローズや日本のヤクザ映画と比較すると「チンピラ感」が足りないね。