華麗なる加齢臭

ノマドランドの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.6
【オスカー狙いがみえみえ】
公開初日に鑑賞。にもかかわらず今日までレビューを書いていなかった。
他の方が書いているように、荒涼ではあるが美しい風景の中で綴られ、そして人生を感がえさせられる作品ではある。それは間違いない。

ただ、同時にフランシス・マクドーマンドがオスカーを狙った作品であることも実感した。

2016年のアカデミー賞ボイコット騒動が契機だろう。多様性がより重視され、同時に既存のハリウッドシステムのアンチテーゼとして24スタジオ等独立系スタジオの興隆が顕著な時代だ。ムーンライトの受賞はこれら潮流が変わったことの象徴だろう。

私自身もはムーンライトの受賞はとても嬉しかったし年に一度は見る作品だ。ただその様なトレンドでは興行成績が重要視されるフォックスやパラマウント作品が受賞することは難しくなった。

そして、その様な映画界の状況下でフランシス・マクドーマンドは、The Riderで劇映画とドキュメンタリーの境界を曖昧にしたクロエ・ジャオという北京生まれの新鋭監督を使い、この作品を作った。クロエ・ジャオはこの作品でも、当事者をキャストにするというThe Riderと同じ手法でドキュメンタリー寄りにすることに成功している。
またフランシス・マクドーマンドもキャリアベストの芝居だし、この映画で伝わる格差や家族、現代社会の矛盾もテーマとしてはここ数年間のトレンドだ。オスカー受賞は誰も文句はないだろう。

ただ、どうもこの作品、「2021アカデミー賞受賞作品の作り方」という教科書に素直に従った作った様に思えてならない。こんな風に素直に作品を楽しめない私はひねくれ者だと自覚している。