松浦義英

ベイビー・ブローカーの松浦義英のレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
2.0
24.05.05:AmazonPrime Video。

2.5よりの2.0。
ソンガンホとペドゥナ好きだから観たけれども二人を使ってこれはなんとも…。
『パラサイト』の人らしい画は沢山あったけどね。
あと、北野武の『BROTHER』よりかは作家性をある程度出してバランスを取れてたのは、素晴らしいと思うよね。
ちゃんと是枝組が現地スタッフを自分の色に近づけたってことだろうから。
イーストウッドの『硫黄島からの手紙』のバランスは無理だったけれども。
作家性は個人的に嫌いなんだけど、そこはまた下に書く。

今回は、ソンガンホにペドゥナだからレビュー書いてみた。
後、題材に近い経験があるので。

疑似家族ロードムービーやるのはいいけど、ロードムービーとして構成がなんとも雑で客への誘導が下手すぎないか…。
疑似家族だからいいんであって、あの観覧車の「5人でもいいな」がただのファンタジーなのがムカムカする。言わせないほうが絶対いいんだ。
この人は社会問題への掘り下げ+それを超える人間愛の機敏や力強さの表現がいつも異常に弱すぎる。
そのおかげで導入で「いや、そうはならないぞ…」と、なりつつ頑張って観続けるけれど絶対中盤に眠くなる。
そして終盤でいきなりちゃんと描写して一応、納得はさせられる。
だから、掘り下げてはいるんだろうが、段階はあれど暗部にきちんと真正面から向き合ってはいないし、隠してしまっているんですよね。
セリフに反映されているように
=ガワだけやられても入り込めないのよね…。
だからこそ考察も映画の外では出来るけれど、作品内の考察は深く潜れないのが嫌い。
ガワだけのお客さん目当てといえばそれはそうなんだろうけど。
劇中の暴力が弱すぎる…。
…是枝監督だけではない点として、
ギャグの連発と終盤までの展開にはそれまではあまり意味をなさない、と。
邦画監督の悪い癖だよなあ。

これまで観てきた是枝さんの作品、殆ど2.0をつけてたわ…。
是枝さんは俺に合ってないだけなんだろうけどね。
そんな批判を是枝さんが受け止めてる感がなくて。
みんなをある程度納得させられないと祭り上げてほしくないなあと思うんですよね。
それを無視して新作を出しているから、嫌に思って、言いたくなるんですよね。
そんな人が邦画を背負ってる椅子に座ってる?座らされてる?のがまた…。
もし祭り上げられてるとしたら余計に邦画界がキツいな…と思うね。
…ネットを見てみると、
『韓国人には評価が低くてその理由は家族愛がわからないから』とか書いてたんですけど…いやそんな向こうの人を敵にしなくとも、映画としての起承転結のカタチがまず問題だと思うんで、
国策として映画を進めてる自国の観客はシビアに見れてるってことだと思うんですよね。

残り30分辺りからの『結』の部分の展開はそこまで悪くないんですよこの人。
…今回も終盤のバランス感覚は良かったです。
一方向に一定の速度で進むモノレールと反対方向に速度を随時変更しながら進むバスがそれぞれ反対方向に交差する。
場面は素晴らしいんですよ。

だからこそ『結』の詰め込みのみでいいんじゃ?
と思ってしまって、
そこで作品全体を俯瞰すると『起承転結』が上手く作用してないことが分かってしまってノれないんですよね。

いい点としては。
・ペドゥナのあの真がある儚い感じ、日本じゃ出せる人いないと思うんでそこはナイスキャストだったとは思う。
「産む前に殺したら、産んだ後に殺すより罪は軽いの?」→
「望まれずに生まれる方が不幸なんじゃない?捨てといて何言ってるの?」
は本当に素晴らしいセリフだった。
こういう事ずーっと考えたりしてるんですよ、俺。
・ソンガンホの娘のシーンの背中合わせのふたりのショットと尾行に気付いている者と、それをわかって追い越す者のショットは良すぎた。
・ラストの「生まれてくれてありがとう」もいいのよ。
だから、「是枝さんはちゃんと考えるん部分はあるのだろうけど…落とし込みが足りないのかな」
と思えてほんの少し良かった。
・子どもの使い方が作品を重ねる度牛歩ではあるけれど少しずつうまくなってると思う。作品のピースとして。
子供って残酷なほど純粋だから、色々と考えて前に進めない大人を易々と前に向かせて、繋げるんですよ。
だから「生まれてくれてありがとう」の反復を担当したんだろうし。
・ソンガンホ好きからすれば…結構もったいない使い方だったんだけども
彼の優しさの使い方としては上手だったとは思う。
・エンドロールの曲は今まで見た是枝監督作の中でも飛び抜けて素晴らしい。
松浦義英

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