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レイディオのamuのネタバレレビュー・内容・結末

レイディオ(2020年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

陰キャが女の子に恋をし振られ。けれど僕にはいつもラジオがあった。という話だな?

と思って観ていたけど、全然違った。
そしてすごくすごくよかった。


満点付けようかとも思ったのだけど、何度も見返したい内容では無かったので少しだけマイナス。でも作品としては本当に素晴らしく、減点材料を探す方が難しかった。自分の中の満点と比較してしまうと素直に点がつけられなかったことで、観終えてからレビューを書くまでに珍しく悩んでしまい時間を要してしまった。ただこの作品の完成度に最初から最後のエンドロールまで胸を熱くさせられたことは確かで、それは伝えたい。

まず、映像の色味が良い。
とても好みだった。
カメラワークは完璧とは言えないけど、そのある種素人感がこの作品を盛り上げたともいえる。

また、キャスティングが良い。
有名俳優が出てこないことが功を奏していた。主人公も、ヒロインも、周囲の人間も、ラジオDJも、全てがちょうど良くしっくりとハマっていた。

はじめは少しわざとらしさを感じたラジオDJも、ローカル感のある若者向けチャンネルとしてはやはりちょうど良く、こんな感じだろうと思わされた。

二回目のゼミに休んだ彼女の動向あたりからこの作品の全てが動き出す。勘のいい人なら結末をも予感させる展開となっていったが、これがエンドロールにいたるまで素晴らしい流れだった。

確実に彼女の病が悪化していること、また助からないという予感を漂わせつつも、主人公が一貫して態度を変えることなく彼女に接していた態度。心の中でどう感じ、どう心配していたかはわからないが、彼女が言う「大丈夫」を鵜呑みにするしかないことも、彼女との関係性から非常にリアリティを感じた。ただ純粋に会いたい、話をしたいというシンプルな感情と行動が、誰かのかけがえのないものになっていることの尊さに自然と涙が出た。

大事な人が余命宣告をされた話や、「君の膵臓をたべたい」「世界の中心で愛を叫ぶ」のようなストーリーは作品としての見せ方が難しく、下手をすると単なるお涙頂戴作品になってしまうが、この作品は令和の、いまの、日常にあってもおかしくはない身の回りに起きた一大事だった。

私にとって普段は少し苦手な部類のテーマなのだけれども、この作品は何度も言うが本当に素晴らしかった。

ラストも、そのタイミングも。本当に。

またエンドロールの名前が全て本人の直筆なところに打たれた胸に追い打ちをかける熱さがありました。
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