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クライマーズ・ハイのタキのレビュー・感想・評価

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
3.8
専門用語に説明なしのスパルタ仕様。原田作品の大問題、セリフがストレスを感じるレベルで聞き取りにくいのも手伝って早々に諦めて字幕。かと言って字幕にすれば字数が多くてそればっかり見てしまうというジレンマ…。
さて、何度も会話の中に出てくる「大久保・連赤」とは、1971年、群馬県内で発生した大久保清による8人もの女性への強姦殺人事件と1971年から1972年にかけて連合赤軍が群馬県の山中の山岳ベースといわれるアジトで同志12人を殺害した事件のこと。武勇伝のように語るオジサントリオが当時どんなスクープ連発したのかと思ってたら、最初こそ抜いたものの後は毎日朝日読売産経に抜かれまくって惨敗だったというのが本当のところで、地方新聞社の情報合戦における地理上の不利をいやというほど知っていたのだった。嫉妬だけではない、諦めの境地がオジサントリオの腰をひけさせていた。それでも地方新聞社が伝えるべき情報とは何なのか、というテーマを主軸に新聞社内のパワーバランス、特に販売部との小競り合いは記者だけで構成されているわけではない新聞社とて一営利企業だということの難しさを描いていて興味深い。
安西という名はアンザイレンを想起させる。アンザイレンとは登山者が岩壁などを登る際に、安全のために互いにザイルで身体を結び合うこと。お互いの命を握り合うこの行為はクライマーズハイ(登山者が興奮状態になり恐怖感が麻痺してしまう状態のこと)にならないための装置のようにも見える。悠木にとっての「チェック、ダブルチェック」は恐怖を常に傍らに置く新聞記者としての魂の在りどころなのだ。
悠木と息子との親子関係についてはセリフで語られるぐらいでどうしてあれほど拗れたのかちょっとよくわからない。1985年の時点で新聞社を辞めてるのにその後なにがあったのか。白河社長との微妙な関係といい、いろいろ盛り込みすぎてこのあたりは消化不良だった。
未曾有の事故に浮き足立つ新聞社をイメージしてたら滝藤賢一(役名忘れた)ひとりが新聞社のクライマーズハイを一手に引き受けていた。ある意味タイトルロールだと思う。

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