このレビューはネタバレを含みます
村上春樹の短い車中の会話劇をよくここまで上手に肉付けしたなぁ、と素直に感動しました。骨と肉の相性が良かったんでしょうね。
濱口監督は「自分がやってきた映画の主題、例えば演じることや乗り物に乗って移動することと響き合うところがあったので制作を決めた」とインタビュー記事に書いてありました。逆に長編だったら、たぶん色が主張し合って難しかったんじゃないかな、なんて想像してます。でも濱口監督は類稀な器用さなので、そこも違和感無く仕上げるんでしょう。
映画はとても良かったです。映像は言うに及ばず、演出、構成文句無し。「他人を知るためには自分を知ること」のメッセージも感じ取れました。
ただ、本当に個人的な感想として_「村上春樹の作品と共鳴したところはそこなん?!」と拍子抜けしてしまいました。もっと本質的なところでシンクロしたのかな、と期待していたので…。
今までの商業映画前の濱口作品はメッセージが露骨な分、心にガツンと来ました。でも今作は「上手い映画」ですが、丁寧且つ洗練し過ぎてあまり心に響きませんでした。観てから1ヶ月以上経ちましたが、その気持ちに変化は来ず。今作はそこだけが残念でした。