みゆ

栗の森のものがたりのみゆのネタバレレビュー・内容・結末

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

映像が綺麗で美しいというレビューしかない物語。イタリアとユーゴスラビアにまたがる栗の木の森に秋が枯葉を降り積もらせて、そこで偶然に出会った老いた棺桶職人と若い栗売りの女が、それぞれの身の上と心の内とを物々交換のようにそっと語り交わす。栗売りには異国から戻らぬ夫がいる。老人は死にゆく妻に秘密をひとつ持っている。森の落ち葉はやわらかい絨毯のようで、物語の中にふっと非現実的な出来事が起こっても、どこが現実との境目だったかわからない。政情不安にあえぐ1950年代の国境地帯というリアルな設定があってなお、彼らの暮らしの道具の使いこまれた質感があってなお、淡い夢を見ているような心持ちになる。ところでちょっと意外なことに棺桶職人のこのお爺、ケチやしお婆さんに対して当たりが強すぎるし、ちょうどいい塩梅に意地悪お爺です。でもだからこそ、この物語は深く深く沁みました。
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