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栗の森のものがたりのanemoneのレビュー・感想・評価

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)
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スロヴェニアから、メランコリックな秋の贈り物
金のインクで書き綴った叙事詩のような美しさ。
画面いっぱいに広がる金色の絨毯、
黒い森と薄紫色の空、賭け事をする男たちの、赤く焼けた手とテーブル
レンブラントやフェルメールを意識した映像が、まるで絵画のよう。

深く優しいブルーが印象的
青壁の前に佇むマルタのショット、澄んだ水が注がれるボウル
白いカッティングレースのブラウスと、柔らかなペールブルーのカーディガンが可愛い

マリオが栗の木で作る棺と、嫁入り道具の箪笥。まるで人生の走馬灯のような作品たちが愛おしい

音楽隊と熊の剥製の行進
スロヴェニアの古い寓話が組み込まれた、絵本のようなウエディングシーンに、監督の栗の地に対する愛を感じる。

人の死の刻に現れる、東方の三天使
可愛らしいベルの音は、永遠の眠りに導く

現実と記憶が、重ね重ね落ち葉に埋もれ、混ざり合ってゆく。

妻を亡くし、マルタも旅立ち、あの森にひとりぼっち。
体も絶え絶えに枯れ木の根元に座り込むマリオ
混沌として、気づけば微睡の中
マリオが乗り込んだ馬車の行先は、天国なのかもしれない。
東欧の優しい子守唄が彼を包み込み…
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