タキ

ハウス・オブ・グッチのタキのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.9
ズバリ、世間知らずの超おぼっちゃま、つなぎを着て妻の実家の運送業を手伝うデカメガネのアダム・ドライバーと気合い溢れる顔面と豊満バディでハイブランドからヤンキースタイルまで自在に着こなす魂だけは誰よりも「グッチ」なレディ・ガガが最大の見どころ。最後の完全にイッちゃってる(ニタリ)もよい。
グッチのお家騒動についてはほとんど知らなかった。視聴後に調べてみたらパトリツィアは離婚後もグッチの女帝でいたかったというのはどの関連サイトを見ても同じように書かれている。さらにこの記事はパトリツィアが逮捕された時の様子や17年に及ぶ獄中での信じられない生活、娘たちとの確執が書かれていて興味深い。

グッチ一族の暗殺事件をどこよりも詳しく解説してみた
https://www.pen-online.jp/article/010706.html

とてもマウリツィオのような凡人が相手できるようなタマじゃないし、離婚ぐらいで逃げられると思うのは完全に間違いだし、相手を殺してなおその資産を相続人たる娘たちからふんだくろうとしているとはスゴイを通り越してエグい。グッチ創業家をしゃぶり尽くす気満々だ。
ホンモノのエグみを知ってしまうと、映画のパトリツィアは悪女というには可愛らしすぎる女、という気がする。当初の結婚生活は地位や名誉やお金のためという感じではなく、実家(グッチ家)と絶縁したマウリツィオをレッジャーニ家であたたかく迎え入れ幸せな日々を過ごしていた。それがアルドによってグッチ家という並外れた金持ちの生活を生まれて初めて経験し、本来の上昇志向に火がついてしまった感がある。知らなきゃ平和だったのに、一回上げた生活レベルをさげるというのはパトリツィアでなくてもなかなか難しいものだ。
パトリツィアが経営に口を出し始め(映画ではコピー商品をなぜ取り締まらないのかとアルドに進言していたが、悪い提案ではない)アルドを追い、従兄弟のパオロを切り捨てるに至る。グッチ家の仲を裂こうとしているとマウリツィオはパトリツィアを非難したが、パトリツィア自身は株を持っていないわけで、2人を切り捨てると決めたのは他ならぬマウリツィオ自身なのにヒドイ言いようだ。夫の愛を取り戻そうとあの手この手でやろうにも上手くいかず、レディグッチの座を渡すぐらいなら殺すしかないという結論も愛の果てのシンプルな思考というような感じを受ける。
パトリツィアが自らをグッチ夫人だと言い張る姿はアルドがグッチのはじまりを宮廷御用達だと嘯いた姿と重なる。
彼女こそ一族の誰よりも「グッチ」だった。
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