このレビューはネタバレを含みます
★1989年に続き2回目の鑑賞★
父親の復讐を怒りをもって計画し、飄々と(口笛が効果的)実行していく西(三船)の静と動の対比、汚職という水面下の巨悪に対する個人的な毒をもっての正義の緊迫感ある対立の描き方が見事で、ラスト10分ほどでのどんでん返しによる、個人の力による正義の無力感は半端ない。
その他にも3者を同じ場面で切り取ってのセリフの応酬や荒廃地での画の切り取り方など、どこをとっても黒澤明円熟期におけるエンタテイメント性と芸術性が非常に高いレベルで融合している。
2時間半という長尺ながら、また、久しぶりの現代劇でありながら全くだれることはなく、前後の作品(本作は「隠し砦の三悪人」と「用心棒」の間に位置する)に比しても劣るということはない傑作。
なお、戸籍を移し替えるとか、まんまと公団副総裁の娘と結婚するだとか、死体も発見されないのにすぐに葬式が営まれるなど、確かに今の時代感で比較してしまうと、展開に雑なところも感じられるのだが、製作当時は戦後たったの15年ということを考え、今の感覚での違和感を評価に加味しない。