chi

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のchiのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

水木しげるにない何が追加されていたかというとモブキャラへの配慮で、妖怪ものなのに理屈が通る話運びでちゃんと全員の去就が描かれており、見やすい映画になっていた。ただし、すべてが解決したせいで後を引く怖さが残らない側面もある。
社内で成り上がろうとする昭和の会社員と消え行く雑誌を最後の踏み台にしようとする現代の記者の対比、物語外のメタな意味しか持たないあらゆる死体から飛び出す左目、生き残りそうな奴から丁寧に始末していくパニック描写など、実直な理屈に満ちていた。

鑑賞後に遡って思い返すとエンドロール以降の原作、更に言えば「すぐに始末しようとしたができなかった」というたった数コマの描写からよくあれだけのエンタメを膨らませ、かつ原作に繋がるように収束させたなという仕事の大きさへの感慨が大きくなってくる。もちろん長年時代に合わせたアニメを続けてきた知見の蓄積もものを言っているのだろう。
両親にビジュアルロンダリングし、父にアクション能力を備え(手仕事であろう線の揺らぎで迫力は得つつも酔わない画面がとても良かった)、水木にヒーロー性を持たせ(血液銀行という勤務先の持つ気味の悪さが都会を出た途端に一切の主張を止める)、根こそぎ消滅させる映画の舞台へは派手に派手に仕掛けを盛る。脳内漢字変換が追い付かなくなりそうな台詞回しにも関わらず人名以外の文字案内をばっさりと切った潔さも外連味を効かせている。

ラストで水木が記憶を失って発見されたのが村付近のようであることから、水木の住居近くの廃寺に両親が潜んでいたのは水木が連れてきた結果ではなく彼らが水木を頼ってきたということになるのだろうか。
chi

chi