るるびっち

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のるるびっちのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.8
水木しげるより横溝正史の世界が強い。
『犬神家の一族』丸出しの、家父長制と因襲に支配された世界。
家系の呪いと血の継承。閉鎖的な村と排他性。
全て横溝ワールドだ。
改めて彼が和製エンタメに与えた影響の大きさを感じる。
日本ミステリーの基盤を形成した。
他の和製ミステリーでも、大家族となれば結局横溝的になる。
因襲・閉鎖性・家父長制の負の三連星にも関わらず、エンタメパワーのある横溝スタイルの力強さよ。
確かに戦争反対や支配層の搾取構造など、水木らしさが横溢しているが所詮は横溝世界に飲み込まれているのだ。

水木の説く怠け者精神。頑張らない精神(本人は仕事人間だったらしいが)。
「朝は寝床でグーグーグー」の感じが希薄ではないか。
ゲゲ郎も最初は、いい加減な感じもあったが後半は真面目だし、ねずみ少年もうまく使えていない。彼の目的が不明だし、ねずみ男はただの小心者ではなく、悪事にも加担する裏切り者なのでその辺も活かされていない。

前半は単調で後半に行くほど、次々悪者たちがレベルアップしていき、犠牲者の悲しみも積み上がる。
しかし次の悪人が出る度に、前の犠牲者の悲しみが忘れさられていくところがある。その時その時の悲しみの感情は、置き去りになっている気がする。
最後の悲しみも良いのだが、その前の犠牲者たちの悲しみは、もう忘れちゃったなという感じ。盛り過ぎなのだ。
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